現在は、保健福祉部長として茨城県庁にお勤めです。
2017年8月から、厚労省からの派遣という形で、茨城県の保健福祉部長をさせていただいています。茨城は人口10万人あたりの医師数がワースト2位ですので、いちばんの課題は医師確保とその前提としての医療提供体制の整備です。
医療提供体制に関しては、医療機関同士の話し合いの場をセッティングしつつ、うまく機能分担しながら有機的な連携体制を構築できるように協議を進めているところです。
医師の確保のほうはいかがですか?
医師不足と言っても簡単に医学部の定員を増やすことはできませんので、新しい発想で取り組んでいます。たとえば、ハンガリーの大学医学部には日本人の学生さんが300人も学んでいるんですね。そこに着目し、卒業後、日本の医師国家試験に合格したら茨城県で働いてもらえるよう奨学金を差し上げる制度を創設し、すでに来てくださることが決まっている方もいます。今年4月には、知事自らハンガリーに赴き、現地の大学で医学を学ぶ、茨城県にゆかりのある学生さんと意見交換をし、茨城県のアピールをしていただきました。
公衆衛生医師の確保に関しては、筑波大学の先生のご協力を得て、非常勤で保健所に勤めていただく公衆衛生医師のリクルート事業をはじめています。大学院の先生や病院に勤務している先生に、月1回から週1回程度、保健所の業務を手伝ってもらうという取り組みです。
逆に、保健所や本庁に勤めつつ、県立の病院で臨床を継続できる仕組みもあり、現在お二人が利用されています。臨床も行政も、大きな意味ではつながりのある仕事で、それぞれの視点がお互いの業務に活かされることもとても有意義と考えており、こうした環境整備はぜひ進めていきたいですね。
茨城県は公衆衛生医師が少なく、保健所長さんの兼務が多い県ではありますが、少ないからこそネットワークがよく、「茨城を良くしよう」という熱意のある先生が多いと感じています。自然豊かな一方で、東京に近く、いろいろな情報を得やすいという利点もあるので、公衆衛生に興味のある先生にとって、やりがいを感じていただける環境だと思います。
もともとは「国際的な仕事に携わりたい」という想いから厚労省に入られ、今は地域に密着した仕事に移られたわけですが、いかがですか?
まったく別の世界ですが、機動性高く、次々と新しいことにチャレンジできるのは、地方ならではの醍醐味だと感じています。
一方で、どこにいても共通して使うスキルもあります。公衆衛生行政医師は、現場のニーズや科学的根拠に基づいて行政施策を企画立案し、ステークホルダーの理解と納得を得る、国会などの場で決定された施策の執行体制を整える――というプロセスをさまざまなフィールドで行っているわけですが、こうしたことをしやすくするためのネットワークをもつこと、またネットワークを活用して必要な調整を行うことなど、横軸のような専門性がしっかりある仕事です。社会の仕組みに興味がある、あるいは社会に貢献したいという想いのある方なら、とても楽しめ、充実したキャリアが約束される仕事だと思います。