研究の概要

公衆衛生行政医師が、不足しています。

病院などの医療機関に勤務する臨床医師の不足のみならず、 地域保健の維持・向上に於いて重要な役割を担う全国の保健所や、自治体に勤務して健康・医療の政策立案に携わる医師(以下「公衆衛生行政医師」とする)の不足が大きな課題となっています。

公衆衛生医師(保健所等医師)のキャリア転職を応援する研究

公衆衛生行政医師確保への課題

厚生労働省は平成26年、各自治体が公衆衛生行政医師に向けた「公衆衛生医師確保のためのガイドライン案」を示しています。また、全国保健所長会は、地域保健総合推進事業の一環として「公衆衛生医師の確保・人材育成に関する調査及び実践事業」を実施して、現職の公衆衛生行政医師の充足度や、業務における満足度について調査を重ねてきました。このように、公衆衛生行政医師の確保・育成に向けた取り組みや調査は以前から行われているものの、行政医師のなり手が不足しており、十分な成果が上げられているとは言えません。

近年、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)パンデミックにより保健医療サービスに対する国民のニーズが高度化、多様化したため、保健医療行政の重要性が増してきており、地域に密着した保健所の役割はますます大きくなっています。国民の健康意識向上が顕著となった現在、エビデンスに基づく正しい健康情報を届け、行動変容につなげることは保健医療行政における重要な役割であり、ここで活躍が期待される専門家として、公衆衛生医師の必要性が今ほど顕在化している時期はありません。

our mission

医育機関―医学部―臨床−自治体−保健所長等をつなぐ、包括的な調査と研究

平成28年の第一次研究班は、自治体の公衆衛生医師の確保と育成を促進するために、女性医師、若手医師、ベテラン医師が公衆衛生医師の具体的な活躍のイメージを関係組織と共有すること、社会医学系専門医認定プログラムや自治体の公衆衛生医師養成プログラムを基に、行政機関の公衆衛生医師におけるコンピテンシーとその育成プログラムポリシーを策定すること、公衆衛生医師に求められる資質や育成に関するガイドラインを整備することを目的として、立ち上げられました。

そして、臨床医師に対する調査や、効果的に人材確保及び育成を実施している自治体等でリクルートを行った保健所長等を対象とした調査を行い、公衆衛生行政医師の育成に求められる要素や課題について明らかにすることができました。

令和4年の第二次研究班は、過去15年間の公衆衛生医師確保の推進から人材育成に至るプロセスについて集約し、自治体で活用しやすい公衆衛生医師人材育成方策のコンテンツを作成後、自治体側からもフィードバックをいただきつつ、コンテンツの実効可能性や、横展開の手法について検証し、今後の人材確保・育成に役立てることを目標にしています。 また、公衆衛生医師と社会医学系教室の連携に関する方策を検討し、地域の公衆医師確保を行政、大学と一体となって行う機運を醸成することもできます。例えば、公衆衛生医師が社会医学系の講義を行う(人材確保)、研究職ではなく実務を担う行政職として大学と連携し、現場課題の解決に繋がるような研究を行う(人災育成)、といった方向性が考えられます。 本研究を通じて若手医師が公衆衛生に興味を持つ局面を明らかにし、その局面で周知する機会を増加することによって公衆衛生活動全般に関する認知を高め、入職へのきっかけとすることも期待されます。

このウェブサイトを通じて、本研究班の研究成果を発信し、得られた知見を関係者と共有することで、公衆衛生行政医師の確保と育成を活性化させることを願っています。